●はじめに
経絡指圧は増永静人先生が欧米にその理論と技術を30年前に紹介しました。そのユニークな技術はたちまち欧米に広がり、現在では世界中の80%の指圧師が経絡指圧を行なっていると言われています。経絡指圧の特徴は東洋医学の理論に従って施術する事で、これにより大きな治療効果を上げることができます。しかし現在、欧米での経絡指圧の実態は決して満足できるものではありません。経絡を実感して指圧をしているものは一人もいないし、それを十分に活用しているものもいません。基本となる全身指圧を習得しているものも皆無に等しく、従って欧米では経絡指圧でない指圧を経絡指圧として行なっているのが現状です。このすべての原因は指導法が確立されていない事です。
しかし経絡指圧普及会では長年の実践でこの指導方法を確立しています。経絡指圧の指導のポイントは受講生に経絡を実感させ、基本となる全身指圧をマスターさせることです。今回のセミナーでは彼らに経絡を実感させる試みをしました。結果は大成功で、あとは彼らが全身指圧をマスターし基本的な臨床技術を学べば、地域でトップクラスの指圧師になれると思います

●セミナーについて
10月26日にフィラデルフィア郊外のGot Your Back(GYB)で開かれ、14人のマッサージ師が参加しました。彼らは指圧は初体験です。27日にはドイレスタウンにあるInternational School of Shiatsu(ISS)の生徒たちに経絡指圧の課外授業を行いました。参加者は17名。
セミナーは午前10時から午後4時まで。午前中は基本となる押圧技術の練習。そして午後は経絡の基本的な扱い方の実習を行いました。

●基本押圧技術
大半の参加者が指圧の基本的なトレーニングは受けていません。しかし基本押圧技術のセンスは大変よかった。この単純な技術は日本人の初心者でも上手にできない。この技術が上手にできるという事は後に続く全身指圧の技術も上手にできる事を意味しています。(前途有望…)

●経絡の実感とトレース
殆んどの指圧師が経絡は分からないものだと信じています。しかし経絡は実感できます。この技術をアメリカで今回初めて公開しました。この技術は二点圧迫の応用で、簡単な解説をして実際に彼らに体験させました。すると全員がその場で経絡を実感できました。さらにその感覚を元に経絡を描く方法を説明し、ペアを組ませ彼らに前腕の経絡を描いてもらいました。大半の人がほぼ正確に引けたようです。

●経絡の基本操作:痛み止めの実習
経絡を使った痛み止めでは針を使った「鍼麻酔」が有名です。今回それを針の代わりに指圧で行う実験行いました。方法は手首に痛みを起こさせてそれを指圧して瞬時に取るという基本技術です。使用した経絡は心包経。ペアを組んで交互にこの方法を実習してもらいましたが、大半の人が指圧で痛みを消す事ができました。これが出来るようになると実際の病気やケガに応用できるのです。

●臨床実技の練習
経絡を利用して病気やケガの治し方を説明しました。GYBでは肩こりを取る方法を解説。この方法は症状のあるコリには手を触れず、症状とは関係のない腕を指圧することで瞬時にコリを取る方法です。また親指の打撲の指圧治療の方法も解説。この方法もケガをした親指には一切指圧をせずに、打撲とは関係のない部分を指圧して治す方法です。更に経絡を伸ばして治療する方法を解説しました。臨床技術は手順を覚える事が大切なので、ISSではペアを組んで実習してもらいました。